
あなたの膝は大丈夫ですか?5
今までのお話から、関節症患者にみられる症状を復習してみましょう。
- 膝、膝関節周辺の疲れ
- 膝関節の痛み、腫れ、赤み、熱感
- 膝の曲げ伸ばしが十分できない
- ロボットのように体を揺すって歩く
病気の症状 1.だるい 2.痛み、腫れ、赤み 3.膝を十分曲げられない 4.体を揺すって歩く
もしさらに詳しい症状を確認したかったら、1ページずつ戻って確認してみましょう。しかし本日お話しする内容は、第5段階、非常に重要な段階です。この段階の患者は手術による治療が必要になるかもしれないからです。現在良好な治療成績を残している方法は2つしかありません。一つ目は足を真っ直ぐにするために脛の骨の上部を切る方法(脛骨高位骨切り術、High Tibial Osteotomy)、二つ目は人工関節への置換(人工膝関節置換術、Total Knee Replacement)です。
地方へ旅行に出かけると、その地域の人々の暮らしを体験してみたくなると言う人がいます。日が昇る前からある場所へ行くと、その地域の人々の暮らしのほぼすべてを知ることができます。その場所とは、早朝の生鮮市場です。市場ではたくさんの地元の人々を見かけます。学校に行く前の子供がお昼のお弁当を買っていたり、お坊さんが長い行列を作って托鉢に出かけていたり、病気を持つ人が喫茶店で集まって話していたり、太極拳をしていたりします。全体を見回すと皆元気そうで活気づいて見えます。膝の曲がった高齢者を見かけても、市場まで歩いてきて機敏に動き、膝が痛そうな様子を見せないために私は変だなあと感じることがあります。
この状態は、変形性膝関節症の第5段階です。患者の症状が悪化し最終段階になりかかっています。真っ直ぐだった膝が曲がり始め、弓のような形になります。まっすぐ立った状態で、小さい子供が足の間を楽々潜り抜けられるほどに膝が弯曲する人もいます。
なぜ膝が弯曲するのでしょうか。その理由を説明します。人が立っているとき、体重は膝関節の内側にかかっています。関節軟骨の密度が減少すると、体重によって関節内側の軟骨が外側よりも先に負担を受け、潰されていきます。膝が徐々に弯曲し、曲がれば曲がるほど足の長さが短くなっていきます。そのせいでよたよたした歩き方になり、ますます歩きにくくなります。
膝が元通り真っ直ぐになることを期待して、またはそれ以上弯曲が進行しないようにと膝のサポーターを使う人がいます。しかし、これだけは知っておいてください。サポーターは意味がありません。膝をサポーターで締めておけば締めておくほど、膝の弯曲が早まります。膝のサポーターは膝関節を締めてぐらつきを小さくし、太腿の筋肉への負荷を小さくしてしまいます。最初の頃は痛みが小さくなり長時間歩けるようになるため、膝が元通りになったように感じ、鎮痛剤も飲まなくても平気になるために、膝サポーターは良いものだと思うでしょう。しかしサポーターを外して歩くと、膝の痛みは何倍にもなって戻ってきます。膝のサポーターをつけていた方の太ももの筋肉が減少していることに気が付き驚くことでしょう。
膝周辺の筋肉は、変形性膝関節症において非常に重要です。日常活動で筋肉により体重によって骨にかかる力が分散します。膝周囲の筋肉は、たくさんある小さな靭帯への負担を分散し、炎症や小さな断裂を引き起こさないように支えています。しかし、毎日サポーターを使うと筋肉が使われないために衰えていき、負荷に耐えられなくなっていきます。筋肉が衰えても膝サポーターがあれば支障が出ないためです。そしてサポーターに依存するようになってしまいます。出かけるときにサポーターがないと、長時間歩く自信がなく、早く家に帰らなくてはならなくなります。
膝がとても弯曲しているのに痛みがない患者は、場合によっては治療の必要がないかもしれません。見た目が悪いことを除けば、長距離を歩ける患者もいます。したがって膝が弯曲していることだけでは手術を選択する理由とはなりません。初めにお話しした田舎に住む人の例を思い出してみてください。膝が曲がっていても生活に支障のない人もいます。しかし痛みが伴う場合は、他の膝が曲がっていない人たちに比べると歩く際に余計な力が必要となるため痛みの度合いがひどいです。膝関節の軟骨へかかる負担が大きく、動く際の摩擦を減らす軟骨がないために必要とされる筋力が多くなります。そのため歩くたびに炎症が引き起こされ、長距離歩くことができなくなります。こうなってしまうと、普通の方法では治療ができない状態です。急いで手術による治療を始めましょう。初めにご紹介した二つの方法、一つ目は足を真っ直ぐにするために脛の骨の上部を切る方法(脛骨高位骨切り術、High Tibial Osteotomy)、二つ目は人工関節への置換(人工膝関節置換術、Total Knee Replacement)です(二つの手術法の詳細はこのウェブサイトからご覧いただけます。)。
次回は最終段階、膝が悪くなり歩けなくなる段階についてです。それではまた次回お会いしましょう。